■みんなNANAになりたい


Nana(9) NANA(9)

著者:矢沢あい
出版社:集英社
本体価格:476円

10代の女の子中心に絶大な人気をキープしている、少女まんが【NANA】。

わたしが、このまんがを手に取ったのは、2巻が出た2000年12月、書店の新刊コーナーに平積みになっていたから。
表紙をくるんでいる帯のキャッチコピーが視界に飛び込んできた。

「夢と希望が詰まった上京物語―――。
 奈々とナナ。
 それぞれ東京に出てきたふたりが偶然であって・・・。」

ちょうどその頃、わたしは大学4年生。
就職も決まって、卒論を仕上げたら、卒業式を待つのみ。
・・・そんな時期だった。

わたしは熊本で生まれ、義務教育から大学までずっと親元から通った。
熊本という土地を出てみたいという気持ちがずっとあって、「仕事」を持ってからなら、両親も納得するかなと考えて、東京で仕事を見つけて上京しようと狙っていたの。
だけれど就職活動に何往復するお金も無く、一般の企業はあきらめて、地方(熊本でも)試験が実施される公務員の試験を受けることにした。

関東地区の地方受験を受けたのが夏。
面接も通って、勤務希望地を「東京・埼玉・神奈川」で提出したのが秋。
最終的に採用が埼玉県所沢市内に決まったのが3月上旬。

これから向かう土地に胸を高鳴らせて、あこがれのTOKYOライフを体中で想像していた(^−^)
そんな時だったから、 「夢と希望が詰まった上京物語―――。それぞれ東京に出てきたふたりが偶然であって・・・。」という文字が、ものすごく心に響いたんだと思う。

夢があるの。
叶えたい、っていうより、体感してみたいことがいっぱい。

希望もあるよ。
大きな街で、最新の刺激をどんどん手に入れたい。

そんなふうに、思っていた。
雑誌に載っている服、そこで生まれる音楽、最新の携帯、TVに出ていたカフェ、人をどんどん繋げていく情報、混沌も飲み込んでしまいそうなイベント、・・・。

「日本を動かす街に住みたい」
就職の面接で「なぜ関東ですか?」と問われても、そう答えるわけにもいかなかったのだけれど、本心は、そうだった。それを実現するために、「就職」を利用した。

親が転勤族だったため、熊本の中でも転々として、一箇所に落ち着くことが無かったのもあって、あまり生まれ育った街に「愛着」はなかった。
わたしの気持ちが外に向いていることを感じた周囲のみんなは、こう言った。
「関西も勢いあるよ。福岡くらいでもいいんじゃない?ほどよく田舎でほどよく都会で、遊びやすいって(^−^)」

だけれど、わたしを占めていた思いは「熊本を出たい」じゃなくて、あくまでも「東京に行きたい」だったのだ。

こういう話をすると、頑ななわたしの心を溶かそうと、アドバイスをくれる人もたくさんいた。
「若いから、東京に憧れるのは分かるけれど・・・。住んだらどこだって同じなんだよ。どこに住むかより、何をするかの方が大事なんじゃない?」

本当に、本当に、そのとおりだと思う。
「東京と熊本」を、「世界と日本」に置き換えてもそれは当てはまる真理かもしれない。

ここを出たら自分は変われるかもしれない、とただ期待するだけなのは「甘え」だよ、と。
憧れてるから良く見えるけれど、良い面も悪い面も併せ持つ、どこにでもある街だよ。ただヒトとモノとカネが集まってるだけで、と。

うん、うん。
そういうものだって、わたしだって分かってるつもりだった。それでも熊本を出たいと言い続けていたのは、わたしは何かに反発して上京したかったわけじゃなかったからなの。

東京に憧れる自分が、「憧れの街」としてしか東京を見られなくなっていることが、恐ろしかった。
「憧れ」は、偏見だ。あばたもえくぼ、で世の中を見ていたら大変なことになる。
もっとまっさらな目で、東京や日本や世界を見なければ、と焦っていた。
そのためには、まず「憧れ」を砕きに行こう。実際に、関東に住んでみよう。

その一心だったんだ。

かくして乗り込んだ街を五感で噛み砕き、「うん。こんなものだよねー(^−^)」と納得して、ようやく「憧れ」は消えた。これでやっと、「憧れの街」じゃなく「ある一つの街」として、東京を見ることが出来る、と思った。

女の子はみんなNANAなのかもしれない。

自分の好きなことで認められたいと願ったり、
ファッショナブルな暮らしにこだわったり、
受け入れてくれる居場所を求めたり、
自分を活かせる場として冷静に選んだり、

・・・それは、色々。

なかには、「偏見を捨てるために体当たりでやってきた」なんてNANAが一人くらいいてもおもしろいかもね。

「じゃあ、偏見を捨てた(つもり)で眺めた東京の印象は?」って?

一人ひとりが目指す方向(ベクトル)がバラバラで、力を打ち消しあってる勿体無い状態。勢いを取り戻すには、それぞれの持ち味をまとめて、大きな流れにしていくことが必要なのかもしれないな。・・・そんなふうに思うようになったんだ。

わたしが東京で出会ったNANAは、「新しい自分」だったよ。



初出:2004/3/14 ブログパーツ
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